NVIDIA GPU の名前の読み方 — アーキテクチャ世代と製品ラインの整理
A100、H100、H200、B200、GB300、L40S、RTX 5090。NVIDIA の GPU の名前は初見では暗号のようですが、軸を二つつかめば大半は読めます。アーキテクチャ世代(科学者の名前) の軸と、製品ライン(用途) の軸です。この記事はその 2 軸の対応を一気に整理します。2026 年半ば時点の話で、GPU の内部構造は ハードウェア中級 #8、サーバーレベルの違いは 前回 で扱いました。
軸 1 — アーキテクチャ世代: 科学者の名前 #
NVIDIA は GPU の設計世代ごとに科学者の名前を付け、製品名の頭文字がだいたいその世代を指します。
| アーキテクチャ(科学者) | 代表的なデータセンター製品 | 時期の感覚 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Volta | V100 | 2017 | ディープラーニング時代を開いた世代、退役へ |
| Ampere | A100, A10, A30 | 2020 | まだ現場に多く残っている |
| Hopper | H100, H200 | 2022〜 | LLM ブームの主役、今も現役生産 |
| Ada Lovelace | L4, L40S / RTX 40 | 2022〜 | 推論・グラフィックスラインとコンシューマーライン |
| Blackwell | B200, B300, GB200/GB300 / RTX 50 | 2024〜 | 現在の主力世代 |
| Rubin | R 系、Vera Rubin プラットフォーム | 2026 後半〜 | 2026-06 量産発表、供給開始の段階 |
ロードマップ上、次は Rubin Ultra(2027)、Feynman(2028)と発表されています。つまり「H は B より昔の世代」のように、アルファベットではなく科学者名の年表として順序を覚えるのが正確です。
軸 2 — 製品ライン: 同じ世代の中の用途区分 #
同じアーキテクチャが用途別の製品に分かれます。
- データセンターのフラッグシップ(x100/x200): A100 → H100 → B200 と続く、学習用の最上位ラインです。後ろの数字が大きくなる x200 系(H200、B300)は同じ世代のメモリ増強版に近い存在です。H200 は H100 の HBM を増やした版で、B300(Blackwell Ultra)は B200 比で HBM3e 288GB に広げた推論・学習強化版です。大型モデルほど演算よりメモリ容量・帯域がボトルネックになるので、こうした派生が出てきます。
- GB 接頭辞: GB200、GB300 のように G が付くと、Grace CPU(NVIDIA の arm CPU)と GPU を一つのモジュールに束ねたスーパーチップです。そこに NVL72 のような接尾辞が付くと、GPU 72 枚を NVLink で一つのドメインに束ねたラック単位の製品を意味します。このクラスはサーバーではなくラック全体が販売単位です。
- 推論・グラフィックスライン(L 系など): L4、L40S は Ada 世代の推論・汎用アクセラレーションのカードです。フラッグシップよりはるかに安く電力も低いので(L4 は 72W)、小型モデルの推論・映像処理・VDI に広く使われます。NVLink がないため、複数枚を束ねる大型ワークロードには不向きです。
- コンシューマーの GeForce RTX: RTX 4090、RTX 5090 のように、最初の 2 桁が世代(40=Ada、50=Blackwell)、後ろの 2 桁がグレード(90 > 80 > 70…)です。データセンター製品とアーキテクチャを共有するので開発・実験用にも使われますが、VRAM 容量(5090 で 32GB)、ECC・NVLink の不在、データセンター配備の制約(ライセンス)のため、プロダクションのサービングとは区別されます。
- ワークステーションの RTX PRO: 旧 Quadro ラインです。コンシューマーのチップをベースに VRAM を増やし ECC を載せたプロフェッショナル用です。
名前からスペックへ — 実際に見るべき三つ #
名前が読めたら、比較はスペック表の 3 項目に絞られます。
- VRAM 容量 — モデルが丸ごと収まるかを決める最初の関門です。H100 80GB / H200 141GB / B200 192GB / B300 288GB / L40S 48GB / L4 24GB のように、同じ世代の中でも大きな差があります。
- メモリ帯域 — LLM 推論のトークン生成速度は、演算よりメモリ帯域に左右されることが多いのです。HBM の世代(HBM3 → HBM3e → HBM4)が帯域の世代でもあります。
- 精度別の演算性能と対応フォーマット — 世代が上がるほど低い精度(FP8、FP4)のハードウェア対応が追加され、マーケティングの数字はたいてい最も低い精度が基準です。世代間の比較では同じ精度同士を比べているかを確認しないと、誇大な数字に惑わされます。
ベンチマーク記事で「何倍速い」という数字が出たら、精度の条件と、ラック単位(NVL)対チップ単位の比較になっていないかをまず見る習慣が役に立ちます。
混同しやすいポイントの整理 #
- H200 は Hopper で、B200 より古い世代です。 数字の 200 が同じでも世代が違います。頭文字が世代、後ろの数字は世代内の派生です。
- A10 と A100 はグレードが違います。 同じ Ampere でも A100 はフラッグシップ、A10 は推論・グラフィックスラインです。桁数がグレードを表します。
- クラウドのインスタンス名はさらに別の層です。 AWS の p 系(p4=A100、p5=H100)・g 系(g5=A10G、g6=L4)、GCP の a 系のように、クラウドごとに独自の名前を使うので、インスタンスのスペック表で実際の GPU モデルを確認するのが正確です。
- 「Blackwell」という言葉だけではグレードは分かりません。 B200(データセンターのフラッグシップ)と RTX 5060(コンシューマーの普及帯)が同じ Blackwell です。アーキテクチャ名は世代を語るだけで、性能帯は製品ラインが決めます。
まとめ #
- NVIDIA GPU の名前は、アーキテクチャ世代(科学者名: Volta → Ampere → Hopper → Ada → Blackwell → Rubin)と製品ライン(データセンター x100/x200、GB スーパーチップ、L 推論ライン、RTX コンシューマー)の 2 軸で読みます。
- x200 系(H200、B300)は同じ世代のメモリ増強版、GB 接頭辞は Grace CPU との結合、NVL はラック単位の束です。
- 2026 年半ば時点の主力は Blackwell(B200・B300)で、Hopper(H100・H200)は今も現役、Rubin が供給を始める時点です。
- 名前の次は VRAM 容量、メモリ帯域、精度の条件の三つで比較します。マーケティングの倍率は精度と比較単位から確認します。
- クラウドではインスタンス名ではなく、スペック表の実際の GPU モデルで判断します。