「探す」はどうやって電源オフの iPhone を見つけるのか? オフライン追跡ネットワークの仕組み

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スマホをなくしたとき、別の端末で「探す」を開くと地図に位置が表示されます。スマホがインターネットにつながっていれば不思議はありません。自分の位置をサーバーへ報告すればよいからです。ところが最近の「探す」機能は、インターネットが切れたスマホ、さらには電源が切れたスマホの位置まで見せてくれます。通信できない端末が、どうやって自分の位置を知らせるのでしょうか。答えは意外にも、道を通りすがる他人のスマホにあります。

基本形 — 電源が入っていてインターネットが使えるとき #

まず単純な場合から整理すると、「探す」機能の基本形は自己報告です。スマホが GPS などで割り出した自分の位置を定期的に、または「探す」の要求が来たときにサーバーへ上げ、持ち主は別の端末からそれを照会します。遠隔ロック、メッセージの表示、データの消去といった紛失対応の機能も、この接続の上で動きます。

問題は、この仕組みがスマホのインターネット接続にまるごと依存していることです。盗んだスマホの電源を切ったり機内モードにしたりした瞬間、追跡は途切れます。この穴を埋めるために登場したのが、次の段階です。

「探す」ネットワーク — 通りすがりの他人の端末が郵便屋さん #

Apple の「探す」ネットワーク(Google も Find Hub という同じ発想のネットワークを運営しています)の考え方はこうです。自分のスマホがインターネットに出られなくても、近くを通りすがる誰かの端末はインターネットにつながっている。その他人の端末を、匿名の郵便屋さんとして使うのです。

動きを順番に追うと、こうなります。

  1. インターネットが切れた自分のスマホは、Bluetooth で短い信号を定期的に発信します。Bluetooth は電力をごくわずかしか使わない近距離用の電波なので、この発信はバッテリーにほとんど負担をかけません。
  2. 近くを通りすがった見知らぬ人の iPhone が、その信号を拾います。その iPhone は、信号と一緒に自分が知っている自分の位置を束ねてサーバーへ上げます。
  3. 持ち主が「探す」を開くと、サーバーに積み上がったその報告が解かれて、地図に表示されます。

つまり、世界中の数億台の端末がたがいの落とし物を代わりに届け出てくれる、巨大な助け合いです。人が多い場所ほど郵便屋さんも多いので、都市では電源の切れたスマホもかなり正確に追跡され、人けのない山の中では最後に目撃された地点だけが残ります。

電源が切れたスマホまで見つかるのは、最近の端末のひと工夫のおかげです。ユーザーが電源を切っても、チップの一部が省電力状態で生き残り、Bluetooth の信号だけは出し続ける設計になっています。バッテリーが完全に切れても、最後に残った電力でしばらく信号を保ちます。

プライバシーの設計 — 郵便屋さんも会社も知らない #

この仕組みを初めて聞くと、心配が先に立ちます。自分のスマホの信号を他人のスマホが拾い、その位置がサーバーに上がるなら、Apple や郵便屋さんに自分の位置を知られるのではないでしょうか。ネットワークの設計は、まさにその心配を防ぐことに力を注いでいます。

  • 信号は匿名で、変わり続けます。スマホが発信する Bluetooth の信号には、電話番号も端末名もありません。ひんぱんに変わる使い捨ての識別子なので、拾う側は誰の端末かはもちろん、「昨日のあの端末」と同じ端末かどうかすら分かりません。
  • 位置の報告は、鍵をかけたまま上がります。郵便屋さんのスマホが上げる位置の報告は、エンドツーエンド暗号化で鍵がかかった状態です。鍵は落とし物の持ち主の端末にしかなく、サーバーを運営する会社ですら、報告の中身(どこで見つかったか)を読めません。
  • 郵便屋さんは何も知りません。拾って上げる作業はバックグラウンドで自動的に行われ、郵便屋さん側の画面には何も表示されません。

結果として、位置を知ることができるのは持ち主だけです。巨大な追跡インフラを作りながら、追跡する会社にはならないという、なかなか興味深い暗号設計です。

AirTag、そして悪用の防止 #

同じネットワークに乗っているのが、AirTag のような紛失防止タグです。タグ自体はインターネットも GPS もない、Bluetooth の信号だけを発信する単純な装置です。ところが「探す」ネットワークの郵便屋さんたちが位置を代わりに報告してくれるので、キーホルダー一つが世界のどこにあっても追跡できるようになります。

強力なぶん、影も付いてきました。他人のかばんにタグをこっそり入れれば、人を追跡する装置になってしまうのです。だから悪用を防ぐ仕掛けも一緒に入っています。自分のものではないタグが自分と一緒に移動していると検知されると、スマホが「不明なトラッカーが一緒に移動しています」と警告し、タグ自身が音を鳴らすこともあります。Apple と Google がこの警告の方式を共同の標準としてそろえたので、Android のスマホも AirTag を検知できます。そうした通知を受け取ったら、無視せずに案内に従ってタグを探して確かめるのが安全です。

まとめ #

電源の切れたスマホが地図に表示される魔法の正体は、こうです。スマホは最後の力で匿名の Bluetooth 信号を発信し、通りすがりの他人の端末たちがその信号を拾って鍵のかかった位置報告を上げ、鍵を持つ持ち主だけがそれを解いて見ます。数億台が参加する助け合いでありながら、匿名の識別子とエンドツーエンド暗号化のおかげで、会社も郵便屋さんも中身を知らない仕組みです。一つだけ実践事項を残すなら、これはすべて「探す」機能がオンになっているときの話です。なくしたあとにはオンにできないので、今日のうちに設定で一度確認しておくことをおすすめします。

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