AWS Certified Cloud Practitioner (CLF-C02) #1 試験の紹介 — 試験構成と学習戦略

読了 11分

AWS 実務トラック 27 編 でコンソールと CLI の上で IAM・EC2・S3・VPC・ECS・Lambda を実際に動かしてみたなら、次の自然なステップは その感覚を資格試験で検証してもらう ことです。AWS 認定は入門 (Foundational)・アソシエイト (Associate)・プロフェッショナル (Professional)・専門分野 (Specialty) の 4 段階で構成されており、その中で最も入門に当たる試験が AWS Certified Cloud Practitioner (CLF-C02) です。本シリーズは CLF-C02 合格に必要なすべてのドメインを 10 編で解きほぐすトラックです。

この記事はシリーズの 0 番目の役割です。試験を解きに入る前に頭の中にあるべき絵 — 試験が何を問うのかどのような形で問うのか90 分で 700 点を超えるためにどう準備するのか — を整理します。

CLF-C02 はどんな資格か #

CLF-C02 は クラウドと AWS の大きな絵を理解しているか を問う資格です。コードを書いたり実際のインフラを設計したりする能力は問いません。代わりに、次のような問いに揺るぎなく答えられるかを検証します。

  • クラウドはコスト構造をどう変えるか (CapEx → OpEx)
  • AWS の責任共有モデルで顧客が責任を負う範囲はどこまでか
  • Well-Architected の 6 本柱はどのようなトレードオフを整理するか
  • EC2 / Lambda / S3 / RDS / DynamoDB はどのワークロードに合うか
  • コストアラートはどこで設定し、請求はどう統合するか

この試験に通った人が AWS の 200 個のサービスをすべて知っているわけではありません。その代わりに どのサービスがどの種類の問題を解くのか を一目で分類でき、コスト・セキュリティ・スケーラビリティといった運用視点の語彙を身につけています。

どんな人に価値があるか #

職種効用
開発者 / 新人エンジニアインフラ語彙を身につける最短ルート。面接の加点
企画・マーケティング・セールスエンジニアと同じ語彙で会話するための最小セット
PM・プロジェクトマネージャーAWS の見積もりやロードマップを直接読める力
AWS パートナー企業の社員会社単位の保有資格数がパートナーティアに反映

逆に、すでに SAA (Solutions Architect Associate) 以上を持っているエンジニアがあえて CLF を取り直す理由は薄いです。上位資格が CLF の範囲をすべて含むためです。

試験の構成 #

CLF-C02 試験の表面的な情報は短く覚えておく価値があります。

項目
問題数65 問 (採点 50 + 非採点 15)
試験時間90 分
合格点700 / 1000 (パーセントではなく scaled score)
受験料$100 USD (再受験も同額)
有効期間3 年
受験資格なし (誰でも受験可能)
出題言語英語・日本語・韓国語・中国語など多数
受験方式Pearson VUE 試験会場またはオンライン監督 (OnVUE)

非採点 15 問の意味 #

65 問のうち 15 問は採点されない試験問題 です。AWS が今後の試験に使う候補問題を検証目的で混ぜているもので、受験者にはどの問題が採点対象か分かりません。この構造のおかげで、1〜2 問落としても合格点は十分に超えられます。分からない問題に時間をかけず、ひとまず解答を入れて次へ 進む運用が重要になるのはそのためです。

合格点 700 の本当の意味 #

AWS は正答率ではなく scaled score (100〜1000) で点数を算出します。試験回ごとに難易度が変わっても合格点が同じ 700 に留まるよう補正する方式です。したがって「70% 正解すれば合格」という単純な換算は正確ではありません。ただし現場で通用する経験則では、採点対象 50 問のうち 36〜38 問 (約 72〜76%) を正解すれば安全圏 とされています。

問題形式の 2 種類 #

問題は 2 種類の形式で出ます。

  1. 択一式 (Multiple choice) — 選択肢 4 つの中から正解 1 つ
  2. 複数回答 (Multiple response) — 選択肢 5 つの中から正解 2 つまたは 3 つ

複数回答は「次のうち 2 つを選びなさい (Choose TWO)」のように明記され、部分点はありません。2 つすべて正確に選ばないと正解になりません。試験画面上部の問題文を最後まで読まずに選択肢へ直行すると、ここで失点しがちです。

4 つのドメインの比重 #

CLF-C02 の出題範囲は 公式試験ガイド に 4 つのドメインで整理されています。

#ドメイン比重シリーズ対応
1Cloud Concepts24%#2 · #3
2Security and Compliance30%#4 · #5
3Cloud Technology and Services34%#6 · #7
4Billing, Pricing, and Support12%#8

比重はそのまま学習時間の配分ガイドになります。Domain 2 (セキュリティ) と Domain 3 (サービス) で合計 64% を占めるため、この 2 ドメインが合否を分けるポイントです。Domain 4 は比重 12% と小さいものの出題パターンが定型的で、勉強量に対する効率が最も良いドメインでもあります。

Domain 1 — Cloud Concepts (24%) #

クラウドの価値提案と運用モデルを問います。CapEx / OpEx、規模の経済、グローバルインフラ (リージョン・AZ・Edge)、AWS Cloud Adoption Framework、Well-Architected の 6 本柱 (運用上の優秀性・セキュリティ・信頼性・パフォーマンス効率・コスト最適化・持続可能性) が中心キーワードです。実務トラック #1 のリージョン・AZ の図がそのまま出題位置に入ります。

Domain 2 — Security and Compliance (30%) #

最大のドメインです。責任共有モデル (顧客が責任を負う領域と AWS が責任を負う領域) が骨格で、IAM・MFA・暗号化・監査・コンプライアンス認証 (GDPR / HIPAA / PCI DSS)・AWS Artifact がよく出題されます。実務トラック #2 IAM#6 セキュリティ基礎 の内容が資格試験の問題にどう変換されるかを #4#5 で解きほぐします。

Domain 3 — Cloud Technology and Services (34%) #

最も表面積が広いドメインです。コンピューティング (EC2・Lambda・ECS・Beanstalk)、ストレージ (S3・EBS・EFS・Glacier)、データベース (RDS・Aurora・DynamoDB)、ネットワーキング (VPC・Route 53・CloudFront・ELB)、運用ツール (CloudWatch・CloudTrail・Trusted Advisor) まで 1 つのドメインに全部入っています。覚える量が多く見えますが、出題パターンは 「このワークロードに最も適したサービスを選びなさい」 に圧縮されます。サービスの全機能を覚えるよりも、各サービスがどの種類の問題を解くのか を分類しておく方が効率的です。

Domain 4 — Billing, Pricing, and Support (12%) #

比重は小さいですが満点近く取れるドメインです。EC2 価格モデル (On-Demand / Reserved / Savings Plans / Spot)、無料利用枠、AWS Pricing Calculator、Cost Explorer、AWS Budgets、Support Plan の 4 段階 (Basic / Developer / Business / Enterprise)、TCO Calculator が中心です。出題形式が定型的なため、#8 1 編で十分にまとまります。

学習戦略 #

1) 実務感覚があるならその上に語彙を乗せる #

AWS 実務トラック 27 編 を通っているなら、IAM ポリシー・VPC セキュリティグループ・S3 バケットポリシー・CloudWatch アラームといったツールを実際に触ったことになります。CLF-C02 の学習はその上に 公式の語彙 (Shared Responsibility Model、Well-Architected、Cloud Adoption Framework など) を被せる作業で十分です。初見の概念がそれほど多くないため、2〜3 週間で合格圏まで引き上げられます。

2) 実務が初めてならドメイン 1・2 から #

実務トラックを通っていない状態なら、Domain 1 (クラウドコンセプト) と Domain 2 (セキュリティ) から学習します。この 2 ドメインが他のドメインの語彙の土台を作ってくれるからです。Domain 3 を先に見るとサービス名の洪水に飲まれやすくなります。

3) 模擬試験は後半に集中 #

最初から模擬試験を解く戦略はおすすめしません。本シリーズを一周してから #10 にフルスケール模擬試験を置いてあります。その時点で解いた点数が合格点を超えれば試験会場へ、足りなければ弱いドメインをもう一周する流れを推奨します。外部の模擬試験を追加で解きたい場合は AWS 公式の Skill Builder または Tutorials Dojo の模擬試験が信頼できる基準です。

4) 「最適な答え」を選ぶ感覚を養う #

CLF-C02 の問題によくある形は 2 つの選択肢が両方とも正しく見える状況で、より良い 1 つを選ぶ 形式です。この感覚は Well-Architected の 6 本柱と責任共有モデルを基準に固めておきます。「コストを問う問題ならコスト最適化柱の語彙で」「セキュリティを問う問題なら責任共有モデルで」答えを切り分ける習慣をつけます。#9 でこのパターンを詳しく扱います。

5) 英語で受験するか日本語で受験するか #

日本語訳は読みやすさが一定ではありません。不自然な訳文から意味を英語に戻して推測する時間が無駄になることが多いため、開発者向けの英語 にある程度慣れているなら英語受験をおすすめします。試験環境では英語 ↔ 日本語の切り替え機能が提供されるので、最初は英語で解いて詰まった問題だけ日本語に切り替える運用も可能です。

登録と受験環境 #

登録の手順 #

  1. AWS Certification ポータル に AWS Builder ID でログイン
  2. CLF-C02 を選択 → Pearson VUE に遷移して受験日を予約
  3. 受験方式を選択 — 試験会場 (Test center) または オンライン監督 (OnVUE)
  4. 決済 ($100 USD、消費税別)。50% 割引バウチャーがあれば決済ステップで適用

試験会場 vs OnVUE の選択基準 #

項目試験会場OnVUE (オンライン)
環境仕切りブース + デスクトップ自分の PC + ウェブカメラ
安定性システムダウンのリスクは非常に低いインターネット・ウェブカメラ・システムチェックの変数あり
身分証英文身分証 1 種英文身分証 2 種
試験前チェックほぼなし試験前 30 分以上のセットアップチェック
おすすめ初受験または環境変数に敏感試験会場へのアクセスが難しい、慣れた受験者

初めての AWS 試験なら 試験会場 での受験をおすすめします。OnVUE は楽ですが、セットアップ・環境チェック・監督官とのチャットなど追加の変数が本試験直前の集中力を削ることが頻繁にあります。

試験直前のセットアップ #

  • 身分証 — 英文表記のあるパスポートが最も安全。運転免許証は英文表記がないと不可
  • 持ち物 — 試験会場ではすべての持ち物をロッカーに保管。飲み物・腕時計・筆記具の持ち込み不可
  • OnVUE の受験環境 — 机の上のすべての物を片付け、デュアルモニターは片方を切り、家族・ルームメイトの出入りを遮断

よく出会う落とし穴 #

1) 受験日を遠くに設定しすぎる #

学習のモチベーションは受験日が近いほど維持されます。実務経験があれば登録時点から 3 週間以内、初めて始める場合でも 6 週間以内 に設定して始めた方が合格率が高くなります。試験日程は 24 時間前まで無料で変更可能なため、まずは近い日付で予約し、必要なら 1 回ずらす戦略が安全です。

2) サービス名の暗記だけに時間を使う #

Domain 3 のサービス種類が多く見えるため、最初はすべてのサービス名を覚えようとします。しかし試験はサービス名ではなく 「このシナリオに合うサービスを選びなさい」 という形で出題されます。したがって覚える単位はサービス名ではなく (ワークロードタイプ → 適したサービス) のマッピングです。

3) Well-Architected の 6 本柱を 5 本で覚える #

Well-Architected はもともと 5 本柱でしたが、2021 年 12 月に 持続可能性 (Sustainability) が追加されて 6 本柱になりました。古い学習資料が 5 本柱で記述されているケースが多いので、#3 で 6 本すべて扱います。

4) 試験中に 1 問にこだわる #

90 分で 65 問なら 1 問あたり平均 1 分 23 秒 です。1 問に 3 分以上かけると最後の 5〜6 問が解けなくなります。分からない問題は マーク (Mark for Review) だけしておいて次に進み、終了 10 分前にマークした問題だけ見直します。

5) 「複数回答」問題の正解数を見落とす #

「Choose TWO」または「Choose THREE」の表記を見落として 1 つだけ選ぶと自動で不正解です。試験画面で複数回答問題はチェックボックスで表示されますが、択一式との見た目の差は大きくありません。問題文の最後の行を必ず確認する習慣が必要です。

まとめ #

この記事で押さえたこと:

  • CLF-C02 は AWS の大きな絵と語彙を検証する 入門資格。コード・設計の能力は問わない
  • 65 問 / 90 分 / 700 点 / $100 / 3 年有効。非採点 15 問が混ざっているため 1〜2 問の失点は十分回復可能
  • 4 つのドメイン — Cloud Concepts (24%)、Security (30%)、Cloud Technology (34%)、Billing (12%)
  • 学習戦略 — 実務感覚の上に公式の語彙を乗せる。模擬試験は後半に集中。6 本柱と責任共有モデルを答えの判断基準として使う
  • 試験会場 vs OnVUE — 初回受験は試験会場を推奨
  • 落とし穴 — 遠すぎる受験日、サービス名の暗記、5 本柱、1 問への執着、複数回答の正解数の見落とし

次へ — Domain 1-1 クラウドコンセプト #

試験の構成は押さえました。ここから最初のドメインに入ります。

#2 Domain 1-1 クラウドコンセプト — 価値と経済、Cloud Adoption Framework では、クラウドの 6 つの価値提案 (アジリティ・伸縮性・グローバル到達・CapEx→OpEx・規模の経済・管理負担の軽減)、AWS Cloud Adoption Framework の 6 つの視点 (Business・People・Governance・Platform・Security・Operations)、そして試験によく出る比較問題 (クラウド vs オンプレミス、責任共有モデルの立ち位置) までまとめます。

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